2012/07/02

エルフ戦記Ⅲ(1)の続き

 今の私が思いつくまま勝手に出発するのは難しい。
 不可能とまでは言わない。しかし私を取り巻く狼人、山猫、アマゾネスの護衛を欺き、狼たちの嗅覚をごまかすことが可能でも、アポロニアと言う国を捨て去るわけにはいかない。
 この国は四人の仲間のよるべき本拠であり、私に従い協力してくれる人々の生活の基盤であり、そして何より元の世界に戻るために私がたてた歴史改変作戦の最重要拠点である。もっとも私の作戦はトキが実行している宗教戦略に比べれば極めて些細なものであった。

 船の完成までの期間に私は陸路東へ向かうつもりだ。
 バクトリア王国(現在のアフガニスタン北部、タジキスタン、カザフスタンの一部)は貿易の拠点になっており、東はチン(秦)、西はパルティア、ローマ、エジプトの、そして南はインドの商人が集まり繁栄していた。またバクトリアはパルティアと同盟を結んでおり、パルティアはセレウコス朝と仲が悪い。そして敵の敵は味方ということであればエジプトと親密な関係にあるアポロニアもまた与国と言えた。

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