2012/06/30

エルフ戦記 Ⅲ(1)続き

 海の見えるテラスに出ると春を告げるセフィーロ(ゼファー:西風)が心地良い。しかしここは夏になると暑すぎる。元の世界よりずっと温暖なのだ。
 東方遠征の艦隊を揃えるには、アフリカ東海岸で行うことも考慮すれば、二年から三年かかる。すぐには動けない。
 アルプスで避暑というのもアイデアとしては良いが、ヘルウェティイ族(現在のスイス西部に居住)はローマに帰順していなかった。行けば一波乱起こるに違いなく、とりあえず固まったローマの北方を騒がせることになる。

 飽きることなく海を見ていると、ヘレンとアウレリアがテラスのテーブルに茶の用意をしてくれた。専属の奴隷たちの仕事を取り上げるので苦情もあるが、二人は決して悪い主人ではない。
 配膳を終わり何かを取りに戻ろうとしたので声をかけた。
「二人とも座りなさい。言っておくけど、団扇と汗拭きはいらないから」
 大船が完成するのを無為に待つ必要はあるまい。

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