2012/06/30

エルフ戦記 Ⅲ(1)続き

 さてこうなると密かに旅立つというわけにはいかない。もともと皆に迷惑を掛ける気はないので、トキに内緒でとはいかないし、船には信用できる乗組員が必要だ。まずは山猫族のピピを呼び出した。
 
 私の希望を聞いたピピはとても嬉しそうに尾をくねらせはしたが、発言は慎重だった。
「インドのさらに東への航海となれば大冒険ですね」
「そりゃあ、アマンへの旅に勝るとも劣らないだろうね」
「アマンとの間には大洋がありますけど、インドは地続きですよ」
「う~ん」
 木登りが得意な山猫族は帆船の優秀な船員なのだが、どちらかと言えば水の上は好きでない。それにインド洋上にある我が国の船舶はアマンへの航海にもちいた大船ではなかった。アクスムで大船を建造してからの方が安全なのは言うまでもない。船大工たちは十分経験を積んでいるので一艘なら半年もあれば充分なのだが……

「よしわかった。アマンの時のものより安全な船を造らせよう」
「え~っ、すぐ出発しないんですか?」
 計画をざっとパピルスに書いてトキに届けさせる。
説明を聞こうともせずピピは飛び出して行った。

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